アンチエイジングやアルツハイマーを研究している白澤卓二さん。
老いないためには「食」や生き方の見直しがキーワードになるといいます。
その実践の一部を見せていただきました。
Vitamix fan report 白澤卓二さん
白澤卓二さん
医学博士。白澤抗加齢学研究所所長。千葉大学大学院医学研究科博士課程修了。東京都老人総合研究所病理部門研究員、分子老化研究グループリーダー、老化ゲノムバイオマーカー研究チームリーダー、順天堂大学大学院医学研究科加齢制御医学講座教授などを経て現職。専門は寿命制御遺伝子の分子遺伝学、アルツハイマー病の分子生物学、アスリートの遺伝子研究。
旬の野菜とケフィア菌のスムージーで、
朝から腸を元気に!
「今日はライムをまるごと入れて正解。香りよくいい感じでできあがっていますね! 柑橘類は皮ごと入れると、香りがとてもよくなります」 白澤卓二さんの仕事場、白澤抗加齢医学研究室では、毎日スムージーをつくっています。備え付けのキッチンはさながら実験室のよう。健康的な食について、日々の生活の中で実験が行われています。スムージーの材料は、ケミカルフリーの牛乳をケフィア菌で発酵させたヨーグルトと、自家農園「Dr.白澤ファーム」の、農薬や化学肥料を一切使わずに栽培された新鮮な野菜。「朝のエネルギー補給はスムージーだけで充分です」と白澤さん。「朝食を食べ過ぎるとからだの動きが悪くなってしまいます。今日のスムージーは、バナナとケフィアをバイタミックスで混ぜ、コンテナの中で前日から発酵させておいたものに、聖護院大根とにんじん、ほうれん草、りんごとライムを入れました。飲んだときに口の中が少しだけぴりぴりとするでしょう?それはケフィア菌が活発に働いて発酵している証拠です。
「野菜の栄養素をまるごと摂りたいから、基本的に、スムージーには食材を皮ごと入れます。オーガニックの野菜は多少化学物質を使っている場合がありますが、私のつくっている野菜は100%ケミカルフリーです」
われわれの腸の中には善玉菌と悪玉菌、そして日和見菌があって、そこに食事が入ってきて消化を行います。このバイタミックスのコンテナの中は、腸の中が善玉菌優位で非常に健康状態がよい人が、バナナを食べたのと同じ状態です。こうした、腸内のよい状態を再現したスムージーを飲んでいると、おなかの中がスムージーに同調して善玉菌が増えていくんです」昼食には、きっちり35グラム、分量を測ってつくったおにぎりを2個食べます。「発酵させた酵素玄米の中に、黒大豆、黒豆、もちきび、あわなどの雑穀が16種類と、じゃこ、さくらえび、数の子、カニ、こしょうとバターが入っています。玄米も、豆も、魚卵もじゃこも、一個の生命体ですよね。それをまるごと食べることが重要です。それらの生命体の中には、人のミトコンドリアが合成する生命エネルギーATP と同じものがつくり出されています。これは決して人工的につくれません。このおにぎりは、まるごとの生命体がぎっしり詰まった完全栄養食。だからエネルギーが高く、少量でも充分なんです。私の専門はアンチエイジングや予防医学ですが、それには、『食』が重要です。1週間に一度だけ気休め程度にいいものを食べるのではなく、毎日の食事が大事です。とくに主食や調味料など日々継続して取るものは、化学物質を使っていない質のよいものを選ぶこと。また、砂糖を控えるのも、現代人にとって重要な課題です。食材を加熱せず、酵素を生かしてローフード的に食べることも大切ですね」
エプロンをして調理の準備をする白澤さん。
ある一日の過ごし方
5:00-6:00 起床、執筆、メールチェック
8:30-9:00 朝食のスムージーづくり、移動 取材、診療、打ち合わせなどをスタート
12:00-13:00 昼食の時間はまちまち 仕事をしながら取る
13:00-22:00 取材、診察、打ち合わせ、夕食など
22:00-24:00 帰宅後、シャワー
1:00 就寝
「”食”から生命力をいかに得るかに
よって、からだの状態が変わってきます」
機能性を追究した究極のおにぎりの中には、生命力がぎゅっと詰まっています。
「このおにぎり、事務所のスタッフに見つかるとなくなっちゃうから、いつも6〜8個はつくります(笑)」
「さまざまな小麦を収集しています。現代の小麦はからだによくないけれど、 人類は小麦をやめられないでしょう。それなら、害を少なく食べる方法に焦点を当てるべきです」
農作業をする白澤さん。「自然農法ファームの土を触ると温かく、 土が生きていることを実感できます」
「いつまでも若々しく活動的に過ごすには、生活に立体感を持たせることです」
いつまでも若々しく、ぼけることなく長生きするためには、食の改善だけではなく、「人生のテーマ」を持つことが重要です。「人生のテーマを持っている人のほうが長寿になる傾向がありますが、これは病院では処方できず、自分で探すしかありません。だから、私は山の中でキャンプを開催し、参加した方が自然と触れ合う中で、自分自身と向き合うきっかけづくりをしています。普段は人が入らない山奥にも行きますが、そこでは日常では起こりえないさまざまなことに対応しなければならず、原始的な感覚を使います。それが脳やからだ中の細胞を刺激し、活性化する働きがあるんです。今、社会全体が平面的になっています。テレビやスマートフォンも平面的でしょう? 自然の中での立体的な体験が、現代人は少な過ぎます。もっと積極的に、さまざまな感覚を使っていくことが必要です」
研究室の小さなキッチンで調理する白澤さん。
有機全粒粉の小麦粉とココナッツシュガー、ケミカルフリーの卵を使った特製シュークリーム。「このシュークリームを食べた人は、他のでは満足できず、もう一度食べたいとぼくのところに戻ってきますよ」
フルートは50代から、ピアノは40代からスタート。気が向いたときに演奏しています。
研究室にはスイスオルゴールがあり、ときには昼食を取りながら音楽を聞くこともあるという白澤さん。これも、立体的な世界を感じるためのツールです。「このオルゴールは音域が広く、奏でるメロディーは、いくつもの音が立体的に重なっています。オルゴールを触ってみると振動しているのがわかりますよね。認知症予防のためのオルゴール療法というのもありますが、音の振動が脳を刺激し、癒し効果が得られます」オフィスにはフルートとピアノも常備していますが、それも脳の活性化のためにやっているといいます。「バッハの曲は、多才な音域を持つパイプオルガンで演奏するのを前提につくられているから、音が立体的に構築されています。パイプオルガンより音域の少ないピアノで演奏するのを前提にしているショパンの曲は、それに比べて平面的です。ハイパフォーマンスをしたいと思ったら、立体的なものを暮らしの中に取り入れていくことです。まず、テレビをやめて玄米を食べるようにすれば、自分がいかに平面的であるかに気づくと思いますよ」人の持つ本来の感覚や生命力を呼び覚まし、本当の意味での「人生の充実」をはかることが、若さを保つことや、長寿につながっていくのでしょう。
スイスオルゴールに耳を傾ける白澤さん。「食べるときの環境も大切です。昼食はこのオルゴールを聞きながらいただくこともあります」